JETプログラムのエベルソン氏
USPで日本語を専攻後、日本へ留学
富山県観光・地方振興局国際・日本海政策課には、国際交流員として勤務する非日系ブラジル人がいる。ブラジルで学んだ日本語を流暢に話すレモス・エベルソンさん(34、聖市出身)だ。エベルソンさんを知る富山県人会の中尾契信事務局長は「彼が初めて県人会を訪れたのは1月の暑い日だったが、スーツにネクタイを締めてやって来た。こちらが『ブラジルだからネクタイなんていいんだよ』と言うと、『いいえ、富山県の職員ですから』と誇り高く答えた」という。そんなエベルソンさんへ一時帰国中に話を聞いた。
エベルソンさんは、都道府県などの地方公共団体が主体となって実施している「語学指導等を行う外国青年招致事業」JETプログラムに参加し、富山県庁に派遣された。
JETプログラムは地方公共団体が総務省や外務省、文部科学省、財団法人自治体国際化協会と協力して実施している。1987年度に外国語教育の充実と地域単位での国際交流の進展を図り、日本と諸外国との相互理解の促進と、日本各地の国際化の推進を目的として始まった。25年目となった今年度までにブラジルを含む39か国から4330人を招致している。
職種は小・中・高校で語学指導に従事する外国語指導助手(ALT)と地域において国際交流活動に従事する国際交流員(CIR)、地域でスポーツを通じた国際交流活動に従事するスポーツ国際交流員(SEA)の3種。エベルソンさんは国際交流員として2007年度から5年間の契約で富山県庁に勤めている。
エベルソンさんが日本語に興味を持ったのは中学3年生のころ、学校で知り合った日系人の友人から日本の話を聞いたことがきっかけだった。「日系人といっても日本とのかかわりが薄い人もいるが、友人は祖母と日本へ行ったこともあり日本との繋がりが深かった」。
日本語の勉強はその頃から始めた。最初の4年間は独学で学び、その後サンパウロ総合大学(USP)へ進学。大学では哲学文学人間科学部文学科で日本語とポルトガル語を専攻した。また、大学進学と同時に日本語コースのある私塾へ通い、日本語習得を目指した。
大学3年生の時、日本の文部科学省の奨学金で大阪外国語大学へ1年間留学する機会を得た。
ブラジルで習い始め5年間続けていた合気道を極めるべく、留学先では合気道部に入部。「とにかく敬語に厳しかった」という同部では、「上下関係の大切さ」と「頑張るという言葉の意味」を学んだという。
特に印象に残っているのは師範に対する接し方で、「ブラジルでは見たことがないほど皆真剣だった」という。
同部で行われた合宿へ参加した際は、師範の食事はいつも最後に出された。食事の部屋の扉はいつも閉ざされていたが、2人の部員が扉付近で足音に耳を澄ませ て待機している。師範が部屋に近付くと「自動ドアのように」扉を開けて迎えるのが部の恒例だったという。「忘れられない出来事」とその光景を話してくれ た。
合宿場では飲み会も開かれ酔うまで酒を飲むこともあったが、翌朝は午前5時に起床し刀を振った。あまりの厳しさに「初めは冗談だと思ったが、自分よりも体力のない部員や女子学生も同じ稽古を行っている姿を見て、頑張る決意ができた」という。
その結果、黒帯取得の夢がかない有段者となった。留学期間が終わりに近付いたころ「また絶対、日本へ戻る。できるだけ早く」と決心して日本を後にした。(つづく)
2012年1月19日付
