伯国の47都道府県人会の中で唯一、県連(園田昭憲会長)に属していなかった富山県人会(市川利雄会長)は昨年、約10年ぶりに県連に復帰した。同県人 会の発足は1960年。2010年8月には県人移住100周年、県人会創立50周年、母県と聖州との友好提携25周年の記念式典を実施するなど積極的な活動を行っている。
今年は10年ぶりに日本祭りに出店するが、アリアンサ郷友会と同県人会主催の第3アリアンサ入植85周年記念式典が14日午前8時から聖州ミランドポリスの第3アリアンサ移住地会館で開催されるために多忙を極めている。
同県人会が販売するのは、すき焼き丼(12レアル)、コロッケ(4レアル)、天ぷら(4レアル)、コーヒーゼリー(3レアル)、あずきのお菓子 (3レアル)などで、出品に向け2月から練習を重ねてきたという力の入れよう。市川会長は「私は日本祭りにスタンドを出すのは初めてのことですが、10年 前に出店を経験した婦人部の会員がいるので力強い。何も心配していない」と胸を張る。
すき焼き丼は来場者の「おいしいものを少しずつ食べたい」という要望に応えて、通常より小さい器で提供し、高級料理を手軽に楽しんでもらうよう心 掛けた。また、今回の日本祭りへの出店を大変喜んだ母県からは、近年注目されている「高岡コロッケ」を提案され、同県人会でもブラジル風にアレンジしたコ ロッケを提供する。
富山県高岡市はコロッケ消費量が全国有数であることからコロッケでイメージアップを図ろうと、04年に高岡市役所の若手職員の有志が運営するホー ムページ「カラーたかおか」で紹介した。さらにホテルニューオータニ高岡が新作コロッケを作るなどして次第に盛り上がりを見せ、08年6月に高岡市、高岡 商工会議所、富山新聞社などが集まって「高岡コロッケ実行委員会」が発足。同じくコロッケで街おこしを進める龍ケ崎市(茨城県)、三島市(静岡県)ととも に「三コロ会」を結成し、交流を深めている。
また、あずきのお菓子は会員の女性がクリームとフルーツとあずきを使ったものを考案し、同県人会に提案したことがきっかけでメニューに取り入れられた。
市川会長は「会員の発案で日本とブラジルの文化が合わさってできたドッセ。とても意味があると思う」と同県人会の明るく活発なエピソードを明かした。10年ぶりの出店となる富山のスタンドは51番。日本祭りに新たな味の楽しみがまた一つ増えた。
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神奈川県文化援護協会(永田淳会長)は今年初めて日本祭りにスタンドを構え、横浜中華街にちなんだ郷土食、中華饅頭をブラジルに紹介する。
同協会は10年に発生した公金横領詐欺事件などによって会員の協会離れが進み、現在ではほとんど活動ができない状況だ。大矢進貞第1副会長は「今 年の総会で役員全員が辞めたいと言った。俺も辞めたいけど、今辞めたら不祥事を起こした人が帰ってきてどんなふうに協会の金を使われるか分からない。きち んと裁判を終わらせて、きちんと皆さんに報告する。そして次の世代に渡す。それが責任を取るということだろう」と語る。
さらに「協会再生の第一歩として何かできることをしたかった。それが郷土食だった。正直、今の自分たちにとって売り上げは二の次。みんなが集って自分たちがやったという証しが欲しい。お金ではなく絆が欲しい」と切実な思いを打ち明けた。
3月に行われた定期総会では会員から「楽しいことをしないと人は集らない」との意見があり、同祭へのスタンド出店を計画。モジ・ダス・クルーゼス 市で行 われたイベントで中華饅頭を販売した団体が好評を博したという話を聞き、「神奈川には横浜中華街がある」ということで中華饅頭の出品を決めた。既に月例会 で調理の練習も行い、準備は進みつつある。大矢副会長は「実際やってみると、やることの多さにびっくりする。母県にもパンフレットを送ってほしいと連絡し たよ」と、うれしそうに笑っていたのが印象的だった。
同祭期間中、協会の会員だけでは2日間のスタンドの販売を乗り切るのは難しい。どうしても会員外の協力が必要だ。役員らは協会再生のために頭を下 げて各 方面に協力を仰いだ。見えを気にしてはいられない。販売するのは単なる郷土食ではない。神奈川再生への願いを込めた中華饅頭が今、同協会の気持ちを一つに しようとしている。(つづく、植木修平記者)
2012年7月11日付
