ブラジル日系社会で戦後、実際に起きた勝ち負け抗争を元に描いた話題の映画「汚れた心」(ビセンテ・アモリン監督)の上映会が15日午後3時過ぎから、 フェスティバル・ド・ジャポンの会場内ホールで行われ、約300人が鑑賞した。当日は同作に出演した日系人俳優らも駆け付け、舞台上であいさつした。
同作は戦後、元帝国陸軍のワタナベ(奥田瑛二)らが日本人植民地で日本の敗戦を認めない者を粛清するため、写真館の店主タカハシ(伊原剛志)を刺客に仕立てあげ、タカハシは徐々に血なまぐさい抗争に巻き込まれ、妻(常盤貴子)との生活が引き裂かれていくというストーリー。
同作のプロデューサー、ルイザ・コウト氏は本紙の取材に対し「この作品は勝ち組負け組問題について描いているが、普遍的な家族愛や国家愛について語っている」と説明した。
また、勝ち組のメンバーとして映画に出演した大城リカルドさん(35)は、よさこいサークルに所属している俳優で幼少のころから公文で日本語の勉 強をしていたという。映画に描かれていた史実については「フェルナンド・モライスの原作が出るまで知らなかった。この映画に出演することで日系人としての 責任を果たしたと言えるかも。奥田瑛二さんの演技は勉強になった」と言葉を選びながら話した。
また、準主役級の子役としてかれんな演技を披露した日系3世の福本セリーヌさん(12)は流暢な日本語で「お父さんと家で日本語で会話している。映画に出てたくさんの友達ができた。今後は女優を目指したい。日本に行ってみたくなった」とはにかみながら語った。
映画上映後、アルジャーに住んでいるという戦後移住者の老夫婦は「あんまり感想は言いたくないし、言わないほうがいいと思う。はっきり言って面白くなかった」「日本人が残虐な民族だと思われる」と顔をしかめながら答えた。
また、アラサツーバに住む2世の男性は「自分が5歳の時に戦争が終わったが、街はこの映画と同じような暗い雰囲気だったのを思い出して悲しくなった。ブラジル人に日本人の心情は理解してもらえるだろうか」と言葉少なに語った。
さらに、80年前に移住したという87歳の老人は「勝ち組はファナチコ(狂信的)というだけで片付けられるが、実はそうではない。複雑な問題がいくつもある。負け組もひどいことをたくさんしたが、報道されていない」と憤りを隠さなかった。
今月、JICA青年ボランティアとして着伯した若い日本人男性は「横浜での研修で勝ち負け抗争については学んだが、映画を見て改めて考えさせられた。いろんな人に見てもらい、歴史を知ってもらいたい」と感想を述べた。
日本での公開は東京のユーロスペースで21日から上映された後、全国主要都市で公開される。また、ブラジルではサンパウロやリオをはじめ多くの都市で8月17日より公開される。
2012年7月19日付
