積極的人材交流で日伯をつなぐ
ブラジル愛媛県人会(西村定栄会長)は、10日午前10時よりサンパウロ市ビラ・マリアーナ区の北海道協会会館で創立60周年記念式典を開催した。母県から中村時広知事(53)や井上善一愛媛県海外協会会長(68)ら35人の慶祝団が出席し、節目の年を祝福した。また式典の前日にはイビラプエラ公園内開拓先亡者慰霊碑の参拝、献花が行われ、西村会長と慶祝団一行は先人たちに静かな祈りを捧げた。
9日午前8時、開拓先亡者慰霊碑前では中村知事と竹田祥一愛媛県議会議長(78)の献花後、1分間の黙とうが捧げられた。慶祝団一行は県連の本橋幹久副会長と木原好規理事の移民の歴史についての説明に耳を傾け、一人ずつ慰霊碑前で手を合わせた。
父親と伯父が移民として来伯し、当日いとこを含め20人以上の在伯親族と夕食を共にした中村知事は「ブラジルには深い縁がある。3度目の来伯だが、また戻ってきたという感覚」と話し、初来伯の竹田議長は「歴史を自分の目で確かめに来られてよかった」と語った。
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10日午前10時過ぎ、350人の来場者を集め60周年式典が幕を開けた。県人先亡者への黙とう、伯日国歌斉唱に続いて西村会長は「愛媛を愛する先人たちが発足した県人会を、会員同士のきずなと関係各位の支援、指導により守ってこられた」とあいさつした。
祝辞は、最初に慶祝団を代表して中村知事、竹田議長、井上会長が述べた。
中村知事は前日に訪問したという移民史料館で「長い歴史の足跡と並大抵でない1世の苦労を感じた」と同県人会を発足させた先人たちにも敬意を示し、母県の特産物や観光名所も紹介。「愛媛県の発展ぶりをぜひ実感しに帰ってきてほしい」と来場者に呼び掛けた。
続いて福嶌教輝在聖日本国総領事、本橋県連副会長、今治市にルーツのある羽藤ジョージ聖州議員、安部順二連邦下院議員がブラジル側の来賓を代表して祝辞を述べた。
式典では、功労者や高齢者の表彰、県人会と母県・海外協会の記念品の交換、安部議員から西村会長への感謝状授与、井上会長から県人会への祝い金贈呈、母県から日系コロニア三団体への功労金贈呈などが行われた。
その中で母県からは、船で移民として来伯した先人に思いを込めたという、四国中央市の伝統工芸水引細工で作られた船が贈られた。
その後県費留学生代表あいさつと記念ケーキカット、万歳三唱が行われ、2時間半の式典は幕を閉じた。
来賓による祝辞の中などで、同県人会が高い評価を受けていたのは県費留学生や技術研修などの人的交流だ。県連の本橋副会長は「県連の中でも数少ない」と評し、福嶌総領事も「日本に素晴らしい日系社会の存在を知らせる機会になる」と話した。
来場者の梅宮真美さん(21、3世)はその一人。「すべてが楽しい思い出だが、特にそば打ちが印象的」と貴重な経験ができたことを語った。
また中村会長は県人会が母県に果たす役割について「人的交流や経済交流で県人会が間に入ってくれると安心感が生まれる」と語ったが、現地民間企業もまた県人会に期待するところは大きい。
式典内でも紹介を受けたブラジル初の愛媛の企業ミウラボイラー・ド・ブラジルの渡邊力社長(46)は「人と人とのつながりや口コミがビジネスの発展に重要なブラジルにおいて、県人会を通して広がる人間関係がある」と話した。
式典終了後には記念午餐会が開かれ、サンバチーム「アギア・デ・オウロ」が中村知事以下慶祝団一行を巻き込んで盛り上げると、今度は慶祝団が「松山名物野 球拳」で会場を一つに。「ジャパニーズ・サンバ」に会場は笑いに包まれた。最後は知事自らもマイクを持ちカラオケ大会が行われ、午後4時にすべてのプログ ラムが終了した。
午餐会で、愛媛県議員の福田つよし氏に「おせったい」という言葉を聞いた。愛媛県も含む四国地方のお遍路文化でサービスを無償でする精神を指すという。
この日の式典は、来場者を楽しませる県人会と母県の「おせったい」の精神がよく体現されていた。
慰霊碑に黙とうを捧げる中村知事(前列左から2番目)ら
コラム【モザイク】
愛媛県人会60周年記念式典で、愛媛県からの慶祝団は知事をはじめとてもサービス精神に溢れていて、サンバに野球拳にカラオケに、自ら体を張って会場を盛り上げていた。式典でも知事は祝辞の中で、移民史料館の移民検索で単身で来伯したはずの自分の父親が女性同伴だったと記録されており、知ってはいけない過去の事実を見たとショックを受けたが、実は夫婦で来伯した伯父の奥さんが、父親の伴侶と誤って記録されていたと話し、会場の笑いを誘っていた。
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一方、県人会は今後65周年、70周年と先を考えると、青年部や県費留学生がどのように引き継いでいくかが重要な課題となるだろう。式典の運営を担った一人で県費留学生OBの河戸ラファエル氏(26、3世)によれば、今回も国歌を連邦警察のブラスバンドと演奏するなどの企画もあったそうで、「今後若い世代が集まり、新しいことに取り組みたいと思っている」と話した。愛媛県海外協会事務局長の上野公広氏(62)は「青年部中心にこれだけ立派な会になったのは団結力、結束力、行動力の表れ」と評した。同県人会のますますの発展を願っている。
2013年11月13日付
