将来を担う世代への贈り物
ブラジル沖縄県人会(田場ジョルジ会長)が移民100周年事業の一つとして編集を続けてきた記念誌「写真で見るブラジル沖縄県人移民の歴史」と、別冊「笠戸丸県人移民325名の名簿及び簡単な足跡」がこのほど完成した。5年余りの時間をかけて出版の日を迎えた同書は、第1回笠戸丸移民から現在まで、ブラジルにおける県系人社会の歴史を伝える写真1500枚を収録。日ポ両語で説明文を付け、将来の世代に残す記念誌となっている。24日の出版祝賀会に先立ち、16日、編集委員会(宮城あきら委員長)、関係者が会見した。
第1回ブラジル移民の約4割を占めた沖縄県人。現在、サンパウロ(聖)市・州内、南マット・グロッソ州カンポ・グランデをはじめ、パラナ、ブラジリアなど国内各地に暮らす県系人口は全日系人口の1割を占めると言われる。
同事業の始まりは、100周年の数年前。当時、県人会には多くの過去の写真が保管されていたが、何の説明もないものが多かった。そこで山城勇元会長が、「先輩が元気なうちにこうした写真をまとめて1冊の本に」と理事会で提案、100周年事業として動き始めた。
11人からなる編集委員会が資料収集を開始。県人会内の写真に加え、笠戸丸移民の子孫など会員家族の所蔵資料、委員が各地に足を運んで調査発掘したものなど3000枚以上の写真から整理、選考して編集された。
資金不足で出版が危ぶまれた時期もあったが、同事業の趣旨に賛同した西本エリオ聖州議の協力で州文化局が13万レアルを支援。ページ数の都合で別冊となった「笠戸丸―」は県人会・会員の協力により出版された。
「写真―」は計384ページ。農場労働から、聖州サントス・ジュキア線やノロエステ鉄道建設後のカンポ・グランデに移って集団地を形成した移民初期。球陽 協会の設立。聖州奥地、北パラナへ広がった戦前から、戦中の移民空白期、戦場となった戦後の母県救援活動とそこから生まれた現県人会・支部。県人社会を助 けたブラジル人。母県からの来訪者。移民50周年から100周年までの式典。初期移民のころから受け継がれてきた音楽・舞踊などの文化活動など、県人、県 系人1世紀の足跡を伝える写真を、日ポ両語の説明とともに掲載した。
「笠戸丸―」には、第1回県人移民325人の氏名や足跡などを再調査、記録したほか、90人の写真が掲載されている。
委員の中には完成を前に亡くなった人や、大きな病気を患った人もいた。宮城委員長は会見で、県人会や写真の提供者、支部、各編集委員など協力者へ感謝。 「(同書の中に)赤い糸のように貫かれているウチナーンチュの心を、ブラジルに生まれた新しい世代に視覚的、実感的に伝えることを目指した。この2冊は1 世から21世紀を担う若き世代への贈り物。本日発表することができてうれしく思う」と喜びを表した。
100周年祭典実行 委員長を務めた与儀昭雄元会長は、編集委員の尽力をねぎらうとともに、「写真が多くあっても、若い人には意味が分からない。箱に入れたまま忘れてしまう可 能性があった」と同事業が始まったころを回顧。「その時の約束を果たすことができ、安心し、喜んでいる」と語った。
委員 として県人会活動など戦後部分の編集を担当した山城氏も、「県人会の倉庫には4000~5000枚の写真があったが、一つも説明がなかった。最初はアルバ ムくらいと考えていたものが、こういう本になり、感動している」と話し、さらに関係者すべての協力があって完成できたと強調した。
結実した編集委の熱意 24日に出版記念祝賀会
今はなくなったものを含めれば100以上を数える地方支部の調査や写真集めに奔走した垣花輝明氏、北パラナ、カンポ・グランデ方面など各地を訪ね歩いた前 田徳英氏など、各委員が手弁当で取り組み、完成した同記念誌。笠戸丸移民の手紙や、戦前のサントスに作られ今は階段だけが残る和志日本語学校の写真など、 貴重な資料も多い。
「訪ねて行くと、写真や見たことがないものがあり、涙が出るような感激だった」と宮城委員長。「恐ら く無いだろうと思っても、実際足を動かし、人を訪ねると、必ずそこには歴史発見の何かがあるという思いを強くした」とこの5年余を振り返り、同書について 「皆の血と汗、涙の混じった成果だと思う」と話す。
戦前と戦後の写真を比べると、戦後のものには移住者それぞれが生活の 安定を得たゆとりが感じられる。金城ルイス委員は、「初期の移民の犠牲があって、その後ブラジル社会から尊敬を受けているということ」と強調する。県人会 の島袋栄喜副会長は、「日本語が読めない人が増える中で、日ポ両語で書かれているのは貴重なこと。この本を見ることで歴史に興味を持ち、沖縄とのつながり が強くなると思う。我々2世3世にとってはこれ以上ない宝物です」と話していた。
「写真―」「笠戸丸―」の2冊はそれぞれ3500部を印刷。国内の会員、日系団体や、母県の県・市町村に配布するほか、他国の沖縄県人会に送ることも考えているという。
出版祝賀会は24日午後7時から、サンパウロ市リベルダーデ区の同県人会館(Rua Tomas de Lima,72)サロンで行われる。
2014年9月18日付
