先駆者移民の苦労を偲ばれ
日系団体主催の歓迎式典が、28日午後5時1分からサンパウロ市リベルダーデ区のブラジル日本文化福祉協会の大講堂で行われ、会場は若干の空きが見られたが、976席ほぼ満席になる来場者が訪れ、秋篠宮ご夫妻をお迎えした。ご夫妻と共に日系5団体の会長、国松首席随員、横田随員、名井随員、梅田邦夫駐ブラジル日本国大使夫妻、中前隆博在聖総領事が登壇した。
◆文協正門からご入場
【羽田和正記者】秋篠宮ご夫妻は同日午後3時15分、ブラジル文化福祉協会の正門前に到着された。
正門階段から赤の絨毯(じゅうたん)が敷かれ、文協の呉屋春美会長が先導し、ご夫妻を丁重にお招きした。ご夫妻は溢れんばかりの笑顔を振りまかれ、時折、来場者と握手をしながら一段一段階段を登られた。
正門階段脇では、アルモニア学園の生徒(5年生)らが日伯両国旗を振って歓迎。ご到着1時間前に生徒らは目を輝かせながら、「午後2時から待ってる。秋篠宮さまについて特に勉強はしていないけど、緊張しています。名誉です」などと話していた。
ご夫妻が階段を登り終え、建物内に入られると、白寿者や百寿者ら99歳以上の高齢者が着席のまま出迎えた。両夫妻は高齢者一人一人の顔を見ながら握手をされ、貴賓室へと向かわれた。
ご夫妻と握手した佐藤誠仁さん(100、沖縄)は「よく、おいでになられたと思います。会話はできなかったが、拝見できて大変に嬉しい。気持ちが高揚して昨晩はよく眠れなかったのですが、今夜はゆっくり眠れそうです」と微笑んだ。
◆日系代表者とご懇談
【佐久間吾朗記者】午後3時18分、秋篠宮ご夫妻は日系5団体の会長らと共に文協ビル2階の貴賓室に到着した。
在サンパウロ日本国総領事館の中前総領事の案内で、集まった叙勲者や日系団体の関係者ら65人一人一人と握手をし、お話を交わした。杖をついた叙勲者には、腰をかがめて同じ目線でお話をされ、ご夫妻の優しさがにじみ出たご懇談となった。
この日の紀子さまは薄いベージュのジャケットとスカートの上下に真珠のネックレスとピアスをあしらったお姿。気品ある装いが印象的だった。
ブラジル相撲連盟名誉会長で叙勲者の赤木政敏さん(84、宮崎)は「初めてご夫妻とお話しした。秋篠宮殿下から『どちらに入植されたのですか』と聞かれ、ここから600キロ先の山奥に入ったとお答えした。『昨年の秋には天皇陛下から旭日小綬章をいただき、ありがとうございました。帰国の際はよろしくお伝え下さい』とお伝えした」と話した。
在聖日本領事館前顧問弁護士で叙勲者の大原毅さん(79、2世)は「どこで生まれ、どの大学に行ったか、ずっと弁護士をしているのかなどを聞かれた。私の名札をよくご覧になって質問してくれたのだと思う。丁寧な対応で、こちらに緊張感を与えない優しさが感じられた」と感激した様子だった。
◆移民史料館
【羽田和正記者】秋篠宮ご夫妻は7階から9階までの日本移民史料館を視察され、7階では「開拓者の家」に午後4時26分に到着され、続いてパンタナールの動物の剥製(はくせい)を鑑賞された。
9階には午後4時40分にご入室。天皇皇后両陛下の御真影のほか、皇室関連のパネルが展示された会場内を一周された。
ご夫妻の案内役を担当した山下リジア史料館運営副委員長は「感激でした。緊張しすぎて、順序を少し間違えてしまいました。とても、おしとやかな印象を受けました」と感想を話した。
◆日系社会歓迎行事
【佐久間吾朗記者】開会に先がけ、モルンビ学校のヒサナガ・カワサキ・レオナルド君とピネイロ学校のジェシカ・テイシェイラ・フェレイラ・レイテさんが両国旗を持ち、入場。掲揚し、続いて吉田エリザベスさんのピアノ伴奏で両国歌斉唱を行った。国歌斉唱にはピッコロ、パイネイラ、文協コーラスの3つの合唱団から参加した45人が美しいハーモニーを聴かせた。
文協の呉屋会長は「今回両殿下が再び来てくれたことを何より嬉しく光栄に思う。今日こうして式典を開催でき嬉しい。私は5歳の時に家族と共に移民して来た。夢と希望を持って移民した人々は厳しい環境の中でも日本に対する愛情と尊敬を忘れたことはなかった。現在では子弟の一人一人がブラジル各地で活躍し、社会に貢献している」とあいさつを述べた。
続いて秋篠宮殿下から「私たちは先ほど(28日午後1時15分)、イビラプエラ公園内開拓先亡者慰霊碑に献花をして参りました。日伯両国の発展に尽くされた先駆移住者に対して改めて敬意を表します」とお言葉を述べられ、前回訪れた1988年の移民80周年式典での思い出を挙げ、「30年近く経った今でも鮮明に覚えています」と語った。「当時、私と同世代だった日系人の皆さんも今では社会の中心として活躍されています。また、若い世代の皆様がこれからも両国の友好の懸け橋として活躍されることを心から祈っております」と話された。
殿下は来場者が聴きやすいようにマイク位置を直すなど、さり気ない配慮を見せられた。会場は静まり返り、殿下のお言葉に耳を傾けた。
その後、レオナルド君から殿下へアララ・アズールの石の置物が贈呈され、ジェシカさんが紀子さまへ花束を贈呈した。
お帰りの際は大志万学園の生徒らが日伯両国旗を振り、また文協ビル外に集まった人たちがご夫妻を見送った。
紀子さまと握手を交わした大矢緑さん(75、群馬)は「握手ができて本当に嬉しい。紀子さまは手が柔らかくて色が真っ白で美しかった」と喜びの表情を見せた。
松酒紀美子さん(83、岡山)は「27年前にパカエンブー競技場で行われた移民80周年祭に秋篠宮殿下を見に行った。当時殿下は若かったが、今も変わらず若々しい」と変わらないお姿に感心していた。
サンパウロ新聞 2015年10月30日付
