講演を行う小川氏

九州大学と山口大学の名誉教授を務める社会老年学の専門家、小川全夫(おがわ・たけお、72)氏が、17日午前9時からサンパウロ市リベルダーデ区の熟年クラブ連合会ホールで「生涯現役社会をめざして」と題した講演会を行い、47人が参加した。
小川氏はNPO法人アジアン・エイジング・ビジネスセンターの理事長や、全国老人クラブ連合会の評議員を務めており、アジア諸国を中心に世界各国を訪れ、それぞれの国の介護について比較研究している。
小川氏の来伯に協力した鹿児島県人会の松村滋樹会長は「小川先生の話が少しでも何かのヒントになれば」とあいさつを述べた。約50年前に日本海外学生移住連盟の第7次団で伯国訪問経験を持つ小川氏は「何らかの形でブラジルと関わりたかった」と話す。
講演会では「高齢者がいかにして、生涯活躍し続けられるか」が説明された。日本では85歳を超えると約半数が要介護の状態になっているという。
小川氏によると健康で長生きできる秘訣は「『働く・喋る・くよくよしない』の3点が重要」と説明する。また、日本では定年退職後も働きたい人が登録し、仕事が振り分けられる「シルバー人材センター」や、会話ロボットや、介護ロボットなども開発されているという。「新しい技術もどんどん取り入れていくべき。それを海外にも広めていきたい。また、同世代同士で助け合いながら生涯現役社会を構築していくことが重要」と語った。
講演会後の質疑応答では「ブラジルと日本は全く違う。日本は恵まれている」という意見が出された。小川氏は「政府間の協力を得て、東南アジアでの福祉活動に力を入れているが、それが今の混乱したブラジルでは難しいので、政府を通さずに民間で福祉活動に取り組まざるを得ない。しかし、ブラジルには老年学の研究者もいるので、今後伯国の高齢者社会の現状について詳しく話を聞く予定」と語った。
聖州モジ・ダス・クルーゼス市在住の田附正甫さん(74、千葉)は「日本は共存共栄の社会。それに対してブラジルは個人主義の社会。日本の方法をそのまま伯国に用いるのは無理があるだろう。この国はラテン系独特の文化があり、人も陽気。ブラジルから日本の高齢者社会に生かせることもあるのでは」と率直な感想を語った。
サンパウロ新聞 2016年6月24日付
