「これ、どうやるが?」、「オイヤ、見てよこれ」、「アシン・ノン・ダー」―。十七日、高知県人会料理部(高橋マリア部長)の料理講習会を覘くと、土佐弁、コロニア語、ポ語が飛び交う中で、女性を中心とした約三十人が土佐の郷土料理にチャレンジしていた。
講習会は、世代交代を宣言した同県人会が、若い世代をひきつけるため新たに企画したもの。初回講習会は、人気の「蒸し」だったためか、「予想を上回る」(高橋部長)受講者が参加。若者、男性、他県出身者、非日系人などが和気あいあいと、「はちきん」の婦人連中に代表料理を習った。
鯛の腹に海老やおからを詰めた人気の「蒸し」は、そのレシピを狙って参加があったほど。大きな鯛を惜しげもなく使い、中に大ぶりの海老もふんだんに入れた豪快料理に人気が集中。わざわざミナス州からやってきた人もいた。
土佐市という県中西部に伝わるこの伝統料理は、十五年にわたって料理部長を務める高橋部長が、同地出身の父親からレシピを譲り受けたもの。「自称助手」の正木清寿さん(八五)らとともに、県人の集まりごとに提供し、好評を得てきたものだ。
この日は、午前六時にセアザに行って買ってきたという四十センチ級の鯛八尾が用意されていた。参加者らは、手本を示す高橋部長に倣って、魚の腹におからなどを詰め、布巾に包んで、直径八十センチほどの蒸し器にセット。
蒸しあがるまでの四十分間は、別室でタラとミンチのボーリーニャに挑戦した。
ここでは、元研修生など若手や男性陣も活躍。マンジョッカ芋を潰す挽肉機を一手に引き受け、婦人から喝采を浴びていた。ただ、形を整える作業となると手馴れた女性陣にタジタジ。背後からそっと見守るという微笑ましい光景も見られた。
調理テーブルの女性陣は初対面同士であっても、「塩は?」、「きれいに作って」、「あんまり大きくしたらみんなにあたらん!」と冗談を飛ばしながら和気あいあい。「所違えど勝手知ったる台所」という感覚であっという間に作業を終えた。
その時ちょうど、「蒸しあがったよ」と知らせがあり、一同は調理場へと移動。「熱いよ、気をつけて」と声がかかる中、蒸し器からは蒸気を立てた鯛が登場。「うわぁ」という感動の声が沸いた。
形を整えるため、トレイを使って鯛を二度、三度とひっくり返すのは、緊張の瞬間だ。「和食を習いたいから」と果敢に挑戦したソンニャ・リベロさん(二六)は「味見した時もおいしかった」と昼食会が待ちきれない様子。
代わる代わるトライし、無事皿に乗せ終わった鯛は、柿やみかんを周囲に飾って最後の仕上げ。ほんのり桜色の鯛と、鮮やかなオレンジ色の柿が好対照をなして、自然と「きれい」という声が洩れていた。
この他、土佐風そうめん、ほうれん草の和え物、サラダ、シュラスコなども用意され、昼食会では、各料理に舌鼓を打ちながら会話を弾ませる参加者らが目立っていた。
高橋部長は、「思ったよりも人が来てくれた」と安堵の表情。「父から習ったことを教えているだけ。郷土料理の良さを、若い世代にも伝えていきたい」と話していた。
写真:「鯛の蒸し」
写真:高橋部長(右端)の手本に見入る参加者ら
