県人会役員改選で異例の人事―。駐在員として2011年から当地で暮らしている村信政幸さん(60)が、鳥取県人会の役員に選ばれた。赴任以前にも親戚が居たことから、定期的にブラジルを訪れていた村信さん。今回、本橋幹久県人会長から直々に要請があり、役員に就任した。同県人会役員の任期は1期2年間。新たな風を吹き込むことにつながるか、期待が高まる。
クリチバに居る伯父が50年前に移民としてブラジルに渡っていたことから、村信さんは学生時代に初めて当地を訪れた。以降、4~5年に1度の頻度で足を運んでいる。
現在、自身が勤めている企業内で日本からの駐在員は村信さんただ1人だが、日系の社員も居るという。「ブラジルは駐在員が来ても差別を受けることなく居心地が良い。苦労された1、2世の苦労のたまもの」と感じているそうだ。
伯父から「県人会に世話になったと刷り込まれていた」という村信さん。着任してすぐ県人会の門戸をたたいた。ブラジルに来る前から鳥取県を出て国内各地で暮らしていた村信さんは、母県を「日本の中では人口も少ないし、肩身が狭い」と見ているが、県人会の傘踊りや日本祭りでの郷土食の人気には驚いたという。
新役員人選の時期、本橋会長から電話があり役員入りの相談を受けた。「伯父が世話になったことへの恩返し」と、その電話で役を引き受けた。
高齢の役員が過半数を占める中、自身の役割について「違うものの見方をすることで、会をもっと良くしようということなのだろう」と語る村信さん。以前暮らしていた兵庫県神戸市で自治会の役員を務めたことから、その経験を生かしていきたいと考えている。
村信さんによると「引退した世代と女性、それと現役世代の3者がうまく動けば活発化する組織になる」。県人会で役を担うにあたって「30~40代の若い方へ橋渡しの手伝いができれば」と抱負を述べた。
新役員が発表・承認された総会後の新年会では、得意のドジョウすくいを披露。「おじいちゃんたちが喜んでくれると思って」舞台に立った。鳥取県人会の新年会では傘踊りや銭太鼓、日本舞踊といった定番の出し物が繰り広げられる。そんな中、見慣れない演目に視線が集中。ドジョウを捕まえた場面では、生きの良いドジョウの動きに歓声が上がった。
駐在員仲間に県人会の活動に参加している人は居らず、「もったいない」と感じているという。企業同士のつながりを尊重しながらも、故郷を思う人たちが集う県人会には特別な思い入れがある様子だ。
これまでかかわりの少なかった日系コロニアと日本人駐在員の間に生まれた接点。今後どういった広がりを見せるのか。展開に目が離せない。
コラム【モザイク】
日本の宴会芸の定番「ドジョウすくい」。県人会の新年会で披露した村信さんは「30年ほど前、名人に教わったことがある」そうだ。ブラジルへ来る際、「こんなことがあるんじゃないか」と必要な道具を日本から持参した。到着後、社内の宴会や駐在員仲間とのフェスタで披露したところ大好評。「喜んじゃって、友人も即興で衣装を付けて盛り上がった」という。笑顔と笑いが起こるのは必須で、「CDとザルがあればできる」という手軽さも利点。宴会芸にお困りの人が居たら「ドジョウすくい」を勧めてみては。
2013年3月13日付
