東北被災者招へい交流事業
県連(園田昭憲会長)主催の「東北被災者招へい交流事業」により来伯した被災者3人(岩手、宮城、福島各県からの推薦)が、23日午後6時半からサンパウロ(聖)市リベルダーデ区の宮城県人会館で講演を行った。「大震災から2年余、伝えておきたいこと」と題された同講演会では、大和田加代子さん(52、岩手県陸前高田市)、松本康裕さん(29、宮城県名取市)、天野和彦さん(54、福島県会津若松市)の3人がそれぞれの被災体験や被災地の実情を来場者約130人を前に語った。
講演会には園田県連会長、木多喜八郎文協会長、菊地義治援協会長ら主要日系団体代表のほか、在聖総領事館から成田強領事部長が出席した。あいさつに立った園田会長は「これを機会に忘れてはいけない事実を被災者の方々と共有し、今後も日本の復興に微力ながら協力していきたい」と述べ、同事業を企画した経緯などを説明した。
最初にマイクを握った大和田さんは、涙ながらに被災地の様子を語った。壇上のスクリーンに遺体収容所の写真が映し出され、大和田さんによって遺体確認作業についての説明がされると、会場では首を横に振り、涙をぬぐう来場者の姿もあった。
大和田さんは赤十字を通じて被災者に渡った支援物資や義援金の分配状況なども紹介し、来場者に何度も感謝の言葉を述べた上で、「これからも被災地を皆様の心の片隅に置いてくれるようお願いします」と頭を下げた。
続いて松本さんは、津波によって甚大な被害を受けた閖上(ゆりあげ)地区の復興に向けた取り組みを説明した。松本さんは「復興の形はなかなか見えてこない が、もう一度頑張ろうと皆で励まし合っています」と話し、被災地では被災者同士が手を取り合って前を向いている様子を明かした。
また、松本さんは震災時に間一髪のところで一命を取り留めたエピソードを紹介し、「何か一つでも欠けていたら私は死んでいました」と話し、「昔の閖上を心にとどめながら楽しく生きていこうと思っています」と語った。
最後は、福島県内最大規模の避難所で運営責任者を務めた天野さんが、避難所や震災後も原発事故などに揺れた福島県の実情を語った。天野さんは、震災後に相次 いで起きた高齢被災者の自殺に言及した上で、「希望をなくすと、人は死ぬんだと知りました。今この瞬間にも古里を失っている人がいる現実を知ってほしい」 と来場者に語り掛けた。
3人の講演が終わると質疑応答が行われ、来場者からは被災地の様子を尋ねる問いや励ましの言葉が3人に盛んに投げ掛けられた。
当日会場を訪れていた大野正人さんは本紙の取材に対し、「震災から2年がたっても、まだ何も終わっていないんだと知った。これからもコロニアが一丸となって支援するべきだ」と講演の感想を語った。
コラム【モザイク】
「被災者招へい事業」で来伯した3人のうちの1人、大和田加代子さんは被災者支援団体「ちーむ麻の葉」の代表を務める人物。同団体は、仮設住宅に住む高齢者にアクリルたわし製作などを嘱託し、その販売利益を被災者に還元する活動を行っている。大和田さんはモザイク子の取材に対し、「家や畑を失った高齢者たちは暇を持て余し、みるみる心が弱っていった」と語り、同団体の設立理由は「高齢者の自殺予防」にあったことを明かした。
◎
震災から半年以上がたち、被災地が震災から初めて迎えた鬱積(うっせき)とした冬。声を大にして語られることは無いが、高齢者の自殺は、東北の被災地各所で問題になっていたことだという。講演会での3人の話には、モザイク子の胸もきつく締め付けられた。3人の口からは「被災地を忘れないでほしい」という言葉が幾度も出てきた。日本から遠く離れたここブラジルにも、被災地を気に掛ける人間が大勢いることをアピールすることで、助かる命もあるのではないだろうか。各日系団体には同事業を一区切りとせず、今後も被災地支援にリーダーシップを発揮してもらいたい。
2013年7月27日付
