第一歩を踏みだした記念の地訪問
午後6時過ぎ、マデロ海岸付近に到着。同地には、1997年5月に「榎本殖民団」100周年を記念して建立されたモニュメントがあり、当時、秋篠宮殿下ご夫妻が同モニュメントの除幕式を行ったという。
既に春日カルロス氏が一行より先回りして到着しており、地元日系団体のチアパス日墨協会の松居小向マリア・アルヘリア会長らとともに一行を出迎えた。
同モミュメント前で改めて、本橋幹久県連会長及び和久井伸孝日墨協会会長が献花し、全員で先人への黙とうを捧げた。
松居会長は「ブラジルの皆様をチアパスで迎えることができて、大変嬉しく思います」と歓迎の意を表し、モニュメント前で墨伯関係者が一緒に記念撮影を行った。
その後、一行は徒歩で100メートルにも満たない距離にあるマデロ海岸に移動し、ブラジルに居ては滅多に見ることができない太平洋を拝んだ。すっかり夕景となった海岸には、熱帯特有の入道雲が横に長くたなびき、沈み行く太陽の光をさえぎった黒い入道雲がシルエットとなって浮かんでいた。
関係者に聞くと、実際に「榎本殖民団」が上陸した地点は、同地から東に数キロ行った場所だという。
ふるさと巡り旅行の常連で、現在はミナス・ジェライス州ポッソス・デ・カルダス市に住む下坂匡(ただし)さん(78、福島)は、母方の父(祖父)に当たる故・森本仙(せん)さんが19歳ぐらいの時、メキシコに行く船に密航し、強制送還されたという話を記者にしてくれた。
「祖父はメキシコに密航してからサボテン畑を逃げ回ったらしいです。その後、故郷の和歌山には帰れず、福島県いわき市に戻ったのですが、そういう話を小さい時に母親から聞いていたものですから、メキシコにはぜひ来たいと思っていました」と下坂さん。2年前にドミニカでのふるさと巡り旅行で一緒になった時は、父親の希望でドミニカへの移住を考えていた経緯を聞いたが、父親と祖父の思いを自分で体験できたことに感無量といった表情だった。
一行はホテルに向けて出発し、チェックインを済ませた後、午後8時過ぎからホテル内コンベンション会場でチアパス日墨協会主催による歓迎夕食会に出席した。
松居会長の説明によると同協会は5年前の2010年に発足し、会員数は約70人だという。協会では農業関係の活動も展開しており、ブラジルでも最近では人気が出ているモリンガや甘味料の原料となるステビアをはじめ、各種野菜類も栽培しているそうだ。
松居会長は「ブラジルの皆様にはるばるご訪問いただき、交歓できる機会を持つことができ、大変嬉しく思います」と歓迎のあいさつを行った。
この日はメキシコの日系団体との交流会最後の夜とあって、チアパス日墨協会側の配慮で、民族舞踊団の踊りも披露され、参加した一同はチアパス州での夜の催しを楽しんだ。(つづく、松本浩治記者)
サンパウロ新聞 2015年10月31日付
