本日付紙面が今年最後の発行となる。2015年は日本ブラジル外交関係樹立120周年を記念し、10月下旬から11月初旬にかけて秋篠宮殿下ご夫妻が来伯され、各地で記念行事が開催されるなど、例年以上にめまぐるしい1年となった。来年も8月のリオ五輪開催をはじめ、日系社会でも各種イベントが目白押しとなることが予想される中、今年も「コロニア10大ニュース」を紹介し、この1年を振り返る。
第1位 修好120年で秋篠宮ご夫妻ご来伯
今年は日伯外交関係樹立120周年を記念し、ブラジル各地で「120周年」を冠した様々な記念行事が開催された。その中でも最大のイベントは、10月28日から11月8日まで12日間の滞在でサンパウロ(聖)、パラナ、南マット・グロッソ、パラー、ブラジリア、リオ各州の全10都市を訪問された秋篠宮ご夫妻のご来伯。各地で日本人及び日系人と積極的に交流の場を持たれ、誰とでも気さくに話されるお二人の姿に好感を持つ人が多く見られた。
昨年8月に発足した日本ブラジル外交関係樹立120周年記念事業ブラジル実行委員会(委員長=梅田邦夫駐伯日本国大使)は、特別事業として「日伯友好花火大会」「日伯共同プロジェクト巡回展覧会(2月から全伯各地で)」を開催。花火大会は9月に聖市インテルラゴス・サーキットで文化イベントと合わせた「花火祭り」として行われ、当日は小雨が降る肌寒い一日となったが、花火を一目見ようと聖市内外から約1万人が訪れた。
120周年記念行事の一環として日本からは、5月に講道館柔道(上村春樹館長)10人の師範・高段者及び関係者が来伯し、「形(かた)」講習会が5日間にわたって聖市イビラプエラ体育館横「南米講道館」で開催された。そのほか、8月の「響ファミリー」公演、同月の海上自衛隊練習艦隊の7年ぶりの来伯、11月には劇団「万有引力」公演が日伯修好100周年以来、20年ぶりに行われるなど多岐にわたった。
第2位 マリナ・シルバ元環境大臣が訪日
本紙創刊70周年記念事業として毎日新聞社と共催した講演会、シンポジウム「持続可能な開発と環境保護~シルバさんと語ろう地球の未来」の講師として、元環境大臣のマリナ・シルバさんが10月に初訪日した。
マリナさんは、「東北の被災地がどうなっているのか知りたい」と講演に先立ち、東日本大震災で津波の被害に遭った宮城県名取市を訪問したことをはじめ、東京・四谷の上智大学講堂で「持続可能な開発と環境保護」についての講演を行った。
また、水銀中毒が起きた熊本県水俣市の水俣病史料館のほか、北九州市の環境ミュージアム、北九州エコタウンセンター、同リサイクル工場や広島市の平和記念資料館も視察。締めくくりは日本記者クラブでも講演を行い、「日本人の体験は歴史的な悲劇だったが、日本人はその悲劇を克服し、再生している。素晴らしい」と賞賛した。
「社会を持続的に発展させるには、社会の仕組みを変える必要がある」というのがマリナさんの持論。シンポジウムでも「木を伐採して利益を得ることから、森林を保護することで利益になるよう社会の仕組みを変える」ことの必要性を説いていた。
第3位 戦後70周年を記念 多彩な平和関連行事
今年の戦後70周年を記念して、特に平和関連の行事も相次いだ。
6月下旬にはブラジル被爆者平和協会会長の森田隆さん(91、広島)が聖市から名誉市民章を受章し、その授与式が聖市議会で行われた。自ら広島市で被爆し、移住したブラジルで平和活動を推し進めてきた功績が称えられた森田さんは「これからも世界平和のために頑張りたい」と述べ、さらなる意気込みを表していた。
9月初旬には、「原爆の子」の像のモデルになった佐々木禎子(さだこ)さんの兄、佐々木雅弘さんとその息子の祐滋さんが来伯。聖州議会に禎子さんが折った折り鶴を寄贈し、同議会に常設展示された。また、当日は自身も長崎での被爆者である画家の伊藤薫さん(聖市在住)の絵画「平和」も披露され、禎子さんの折り鶴と共に常設展示された。
今月初旬には、核兵器廃絶を願って五輪発祥の地であるギリシャから贈られた聖火「ナガサキ誓いの火」が、「ブラジル・日本平和の絆交流会」の中嶋年張代表と連続11年、13回のブラジル公演を行った歌手の井上祐見さん、そして井上さんの息子で、チビッコ交流大使の笠戸丸ともやす君の3人によってブラジルに運ばれ、12日にサンタ・カタリーナ(SC)州フレイ・ロジェリオ市にあるラーモス移住地内の「平和の鐘公園」に分灯。同地で記念セレモニーが開催された。
第4位 在サンパウロ総領事館開設100周年
在サンパウロ総領事館開設100周年を記念した在外公館長表彰が8月初旬、聖市モルンビー区の同総領事公邸で行われた。受賞対象となった100団体には、各都道府県人会など各日系団体、また聖州軍警察や同州立学校などブラジル側からも選出された。
表彰式では日伯両国歌斉唱後、来賓者が紹介。今年は総領事館開設100周年、日伯外交関係樹立120周年、移民107周年であり、中前隆博総領事は「この表彰は、日頃からお世話になっている団体の皆様への私たちの感謝の気持ちです。無理やり100団体に限ったわけではなく、今後も様々な機会でそれぞれお世話になった方々に対してお礼をしていきたい」と謝辞を述べた。
今回は日本語コースを設けるなどして、日本語の指導をしているブラジルの教育機関15団体以上が選出された。
第5位 文協初の女性会長に呉屋氏が就任
4月下旬には、ブラジル日本文化福祉協会の第148回評議員会が開かれ、単一シャッパの承認により呉屋春美氏(62、沖縄)が女性として初めての文協会長に就任した。INSS(国立社会保険院)裁判、国士舘スポーツセンター日本文化公園構想など山積する問題については、3期6年間会長を務めた木多喜八郎前会長の路線を踏襲していくとしながら、「単に女性としてではなく、地方にも積極的に顔を出すなどし、皆さんのために文協をもっとオープンなものにしていきたい」と意気込みを表した。
文協は今年創立60周年を迎え、今月17日に記念式典を開催したほか、日伯外交関係樹立120周年特別事業の一環として、イビラプエラ公園内にある「日本館」の改修工事を実施。岐阜県から中島工務店一行が来伯し、11月下旬から約1カ月間にわたってシロアリ対策や腐敗箇所が見られる土台部分の取り替え作業などを行った。
第6位 アマゾニア日伯援護協会創立50周年
アマゾニア日伯援護協会の創立50周年記念式典が1月、パラー州ベレン市内の汎アマゾニア日伯協会内の神内講堂で開催され、関係者や来賓など約400人が出席した。式典を前に、援協のアマゾニア病院敷地内で「神内良一病棟」落成式も実施。記念プレート除幕の後、関係者や来賓たちは5階のUTI(集中治療室)と4階の個室病棟を見学。ほぼ完成した施設に見入り、満足した表情を浮かべていた。
新病棟は4月から本格的に始動し、最終的には一般病棟110床(個室94、大部屋16)、救急外来10床、UTI20床の病室と、手術室8室を保有することになるという。
汎アマゾニア日伯協会内の「神内講堂」に場所を移して行われた創立50周年記念式典では、援協代表者が1965年に創立された援協の歴史を年代ごとに振り返り、今回の「神内病棟」完成で多大な協力を行った日本国際協力財団の神内良一理事長をはじめ、日本財団やJICAなど日本側の支援や初期の援協を支えた日系医師への感謝を表した。また、援協をはじめ同地域日系社会の協力がなければ福祉事業はやっていけないと強調し、現在の援協役員及び職員の名前を一人一人読み上げて紹介し、50年を節目に新たな気持ちで臨んでいく意気込みを示した。
第7位 各地で日系団体周年行事開催
今年もサンパウロをはじめ、各地の日系団体の周年行事が数多く行われた。県人会関連では、佐賀60周年、群馬70周年、兵庫55周年(8月)、富山55周年、秋田55周年、広島60周年(10月)、鳥取留学生・研修生制度50周年(11月)など。地方では、聖市近郊サンベルナルド・ド・カンポのみずほ植民地が5月に創設80周年を迎えたほか、聖州ノロエステ地域では、平野植民地が8月、アグア・リンパ植民地が9月にそれぞれ入植100周年の記念行事を実施した。また、パラナ州では日本移民入植100周年の節目の年となり、今年の日伯外交関係樹立120周年行事とともに各地で記念イベントが開かれた。
今年「還暦」の節目を迎えたのは、リオ州日伯文化体育連盟と戦後移民最大のコチア青年移住。特にコチア青年連絡協議会は移住60周年を記念し、8月にブラジリアでコチア青年子弟の飯星ワルテル下議の提案により、初の慶祝議会を開催した。また、メイン事業の記念式典が9月下旬にサンロッケ市の国士舘スポーツセンターで行われ、ブラジル各地に住むコチア青年とその家族や関係者など約800人が出席した。さらに、式典前には「国士舘コチア青年の広場」でコチア青年記念慰霊碑をはじめ、同制度誕生に尽力した元コチア産業組合専務の下元健吉氏と同組合移民課長だった山中弘氏の胸像が移設披露。並行して慰霊碑前で物故者追悼法要も執り行われた。
第8位 伯国各地で邦人及び日系人被害
ブラジルの物価上昇に伴う経済不況やジルマ政権に対する不満などで社会不安が顕著になっている中、日本人及び日系人が強盗事件や凶悪犯罪に巻き込まれる事件も発生した。
4月初旬には、聖市リベルダーデ区にある日系旅行代理店で邦貨35万円を伯貨約1万1000レアル分に両替した日本人が襲われた。
10月下旬には立て続けに強盗及び凶悪事件が発生。千葉県市原市で生まれ、その後ブラジルで14年間生活していたルアン・オオシロさん(18)が、サントス市内の路上で強盗殺害の被害に遭い、死亡した。
また、聖市リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街のアパートに2人組の強盗が入り、日系女性(24)1人がパソコン、携帯電話、腕時計、衣類などを強奪される被害に遭ったが、幸いにもケガなどは無かった。さらに、パラー州トメアスーで日系人女性が焼死体で発見されるという衝撃的な事件が発生。殺害されたのは、トメアスー農業総合組合(CAMTA)小長野道則理事長の次女小長野カリーナさゆりさん(23)と確認された。
11月中旬には、ベレン郊外アメリカーナ地区で2人の邦人が射殺される事件が発生。同地にある刑務所を3台の車に分乗した8人組の武装グループが正面から襲い、警備の軍警等と撃ち合いとなり、武装グループは刑務所前を通る国道に出て車を奪い逃走を図った。その際、刑務所前を通りかかった野口ヒロノブ氏運転のハイラックス車に対し停車を命じたが、武装した男たちの姿に驚いた野口氏がそのまま通過しようとしたようで、男たちはいきなり車に向け銃弾を浴びせた。このため、車に同乗していた野口氏の実姉の繁友恵美子さん(77)と妻のエツコさん(74)が即死。野口氏は病院へ運ばれ、一命を取り留めた。
第9位 聖市カーニバルに立佞武多 山車はモジ市で焼失
サンパウロ(聖)市のカーニバルが2月13日夜に開幕。14日早朝には日伯外交関係樹立120周年を記念して『ブラジルと日本120年の絆』をテーマに選んだサンバチーム「アギア・デ・オウロ」が登場。東日本大震災からの復興を願い制作された青森県五所川原市の巨大立佞武多(たちねぷた)『復興祈願 鹿嶋大明神と地震鯰』が外国からの山車としてブラジルのカーニバルに初出場を果たし、カーニバル史上最多となった日系人550人、日本人100人の計650人の参加者を含む総勢約3500人が日伯両国の想いを乗せて歌い、踊り明かした。
立佞武多の山車は4月中旬に2週末にわたって開催されたモジ文協スポーツセンター総合運動場での第30回秋祭りに、同文協が借り受けて展示された。その後、そのままの状態で総合運動場に置いて管理していた立佞武多が6月初旬、運動場周辺に住む管理人が燃えているのを発見。地元警察に通報したが、ほぼ全焼した。
第10位 動き出さない日本政府のジャパンハウス
昨年来伯した安倍晋三首相の肝いりで日本政府がサンパウロ、ロンドン、ロサンゼルスにジャパンハウスの設置を決めた。平成27年度予算で資金的な裏付けも整ったが、1回目の入札は不調に終わり、2回目の競争入札も失敗。結局、9月に大手広告代理店電通が随意契約という形で委託業者として決まった。9月中にはパウリスタ大通りにある不動産物件と契約できると噂されたが、12月になってもなしのつぶて。サンパウロ総領事館は「日系コロニアと協力してジャパンハウスを盛り上げる」と言ったものの、コロニアには何の情報もなく、唯一9月にサンパウロでジャパンハウス運営委員会が設立され、9人のメンバーに委嘱状が手渡されただけ。
サンパウロ総領事館ではジャパンハウスのために人員を増やしたものの、これでは仕事のしようもなく、手持ち無沙汰を囲っている。コロニアも当初、ジャパンハウスに大きな期待を寄せ、様々な協力体制を模索したものの全く相手にされず、「外務省から委託を受けた電通もあいさつにも来ない」と不信感ばかりが募っている。
サンパウロ新聞 2015年12月29日付
