イタジャイに1泊した後、一行はサンジョアキンへの旅路に就いた。1号車のバスの中ではいつの間にか1人の客がピアーダを皆の前で披露し、バス内をわかせていた。マイクを握るのは、今回で27回目の参加となる清水秀英さん(78、愛知)だ。「色々なことを調べるのが好きで、つい皆に教えたくなってしまう」と語る清水さんは、その後クイズ大会を開き、ともすれば退屈になりがちなバス移動で皆を楽しませていた。
サンジョアキンに着くと、辺りは荒涼とした丘陵が広がっていた。サンジョアキン市は人口約2万5000人の小さな街だ。標高が1300メートル程あるため冷え込み、上着を着込むようガイドからの指示があった。レストランで昼食を取った一行はその後、SANJO(サンジョアキン農業組合)の工場へ向かった。
SANJOはコチア産業組合が1994年に解散した後、組合員たちが自ら出資し作られた農業組合だ。名前はサンジョアキンの略称に由来し、現在は78人(うち3人が非日系)の組合員がいる。当日は日曜のため工場は稼働していなかったが、一行のために工場を特別に開けてもらえた。衛生管理のために着せられた白衣に、「まるで原発のように厳重だ」などと少しざわめきながらも、皆ガイドの説明一言一句に耳を傾けていた。
中でも圧巻だったのは、2010年から稼働したワイン用の新工場だ。1基にワイン500本が入るというコンテナがたくさん積まれた冷暗室にはワインの甘い香りがほのかに漂い、一行の購買意欲をこれでもかというほどに高めていた。もちろん記者もたまらず1本購入した。
02年から始まったSANJOのワイン作り、現在では年間5~6万本出荷している。ブラジルワインは概して白ワインより赤ワインの方が国際的に評価を得ることが多かったが、当地の寒冷な気候は特に白ワイン用のシャルドネ種(Saviao branque)栽培に適しており、数々のコンクールでも受賞するなど高い評価を得ているという。
しかし、SANJO理事の飯田義孝パウロさん(57、2世)の話では、「ワインの出荷量は年々少しずつ伸びているものの、ブランド力が必要な市場なので輸入品が強く、まだ黒字事業にはなっていない」状態だという。一方のリンゴは20年前から3万トン伸び、現在年間4万2000トンを出荷するなど好調だ。
現SANJO組合長を務める清水信良さん(51、東京)は「3年前から婦人部が始めたリンゴジュースは順調なので、そういった加工品にも力を注いでいく。リンゴの貯蔵庫も増やしていきたい。しかしリンゴばかりに頼るわけにはいかず、ワインは今後も根気強く続けていく。今年はSANJO設立20周年の記念年なので、大いに盛り上げていきたい」と今後の抱負を話した。(つづく、毛利健人記者)
2013年4月13日付
